絶不調はまだ続いている

■今頃取った夏休みが明けた後、仕事に復帰すると、またエライことになっていた。

 仕事だけでなく私の頭も全然回らず。これまでなら休み明けは午前中は頭が少々ボーッとするものの午後になると通常モードに戻っていた。しかし今回は午後になっても全然頭が仕事脳に戻らない。これも加齢によるものなのだろう。これからどうなっていくのだろうかと不安が過った。たぶん職場の同僚たち(皆私よりも全然若い)も何となく気付いている。「このじいさん、だんだん使えなくなってきた」って。そしてリーダー格の同僚が私に気を使っている(もしくは危なっかしくて私に任せられない)ってことがありありとわかるような状況になってきた。さもありなん。同じ立場になったら私だってそうする。私がやれば3日かかるが若い奴にやらしたら2日もかからずに終わるのだ。リスク計算するのは当たり前のことである。

 そんなことをひしひしと感じながら休み明けの週を過ごし、また休日がやってきた。

■10月28日(土)

 午前中に眼科医に行く。数年前に緑内障になってしまったので3カ月ごとに受診し、点眼液をもらっている。そして半年ごとに視野検査を受けて、これ以上緑内障が悪化しないように心がけてきた。

 前回7月に受診してから約3カ月経過したし、点眼液も最後の1本となってしまったので絶対に今日受診せねばならんと思っていたので、いつもの家用を済ませた後、午前9時過ぎに眼科医に向かった。

 眼科医が入っているビルに到着し、スクーターを横に停めて眼科医があるフロアに行き、入口に辿り着いた。だが次の瞬間、私は茫然と立ち尽くしてしまった。眼科医院のドアに貼られていた看板は剥がされて代わりに無情な貼り紙があったのだ。

 実はこの眼科、数年前から院長医師が姿を見せなくなった。理由は病気。詳しいことが我々患者には伝えられることはなく、すぐに代りの医師が関係する大学病院から曜日単位でやってきて医院としてはその後も継続された。私は3カ月に一度の土曜日に訪れるというパターンであったが、行く度に違う医師と対峙した。カルテはずっと受け継がれていたから私からその時々の医師に症状を一から説明するというようなことはなかったが、責任を持って診てもらえているという感はあまりなく、とりあえず近くにあって必要とする検査を受けることができ、必要とする薬の処方箋も書いてくれるということで他の医院に移ることなく定期的に受診し続けていた。そしていずれはこの医院は閉院となるのであろうと思っていたのだが、いきなりこんな無責任な閉院の仕方をするとは夢にも思っていなかった。

 最低限、定期的に受診している患者には電話をするとかハガキで知らせるだとかをして必要とする患者にはカルテの情報等を紹介状として書くなりして確実に次の医者への繋ぎをするものだと思っていた。それが長年この地域で眼科医院として診療し続けてきた医療従事者の、現場から去る際の最低限の仕事ではないのか? なのにこの有様だ。

 確かに数年前に姿が見えなくなった院長医師は最後までその姿を再び我々に見せることはなく、日替わりで来ていた代替医師はある意味他人事であろうし看護師や検査技師も雇われていたに過ぎない人たちであっただろうから、言ってみればいったい誰があの医院の責任者なのかよくわからない状態であったのだろう。そんな状態でいったい誰が今頃になっていきなり閉院を決めたのか知る由などないが、閉院によって迷惑を被る患者のことなど結局は誰も考えなかったのだろう。だからこんな極めて事務的なやり方というか塩対応しかしなかった、いや、できなかったんだろう。

 まったくもう本当に無責任極まりない。でもそんなふうにいつ閉院してもおかしくないような医院に通い続けていた自分も馬鹿だったのだろう。さっさときちんとした医師が常駐する医院に変えるべきだったのだ。そうしていたらこんな憂いはなかったのだ。

 しかしまあどうしようって思った。通っていた医院が閉院になったからといって医者通いをやめていいわけはない。きちんと治療を続けなければ自分の目は悪くなる一方。緑内障なので最悪は失明に至りかねない。

 自宅に戻って連れ合いと相談。近くにいくつか眼科があるから、そのうちのどこかに行こうかと思い、ネットでクチコミをチェック。するとどこもあまり評判が良くない。一番困るのは予約しているのに、その時刻なんてほとんど関係なく、たいていそれから1~2時間くらい待たされるというような医院。そして次に困るのが医師や看護師などが患者に対して高飛車な態度を取る医院。クチコミによるとほとんどの眼科医院がどちらかの不満にまみれている。

 悩んだ末、少し遠くなるが連れ合いがコンタクトの処方とか白内障の手術とかで今も世話になっている眼科に私もお世話になることにした。連れ合いによるとそこは医師はもちろん、看護師や受付の人たちの応対がとても良いらしい。もちろん医師の腕も確かですごく良い医院らしい。そう言えば連れ合いの白内障の手術時に付き添って私もその医院を何度か訪れたことがあったのだが、確かに予約時間に行けば大して待たされることはなかったみたいだし、医院の人たちも人当たりはとても良かった。頻繁に行くわけでなく3カ月に一回というスパンだから考えてみれば少々遠くたってかまわないわけだ。

 そういうことで連れ合いがお世話になっている医院に電話をし、事情を伝えたら快く受けてくれた。初診は(少々待つことにはなるが)予約なしでも良いとのこと。よって早速その医院に行った。

 結果、ほとんど待たされることなく迅速に各種検査をしてくれた。医師との話もスムーズで、今まで通りの治療をここで新たに続けることが可能になった。

 ああ、「やれやれ」である。

 願わくばこの医院と長く付き合いたい。そして未来にやむなく閉院せねばならなくなった時は、お願いだから患者のことを考えた行動をとってくれるよう祈りたい。


備考:

 連れ合いがお世話になっている医院に行って問診票を書いていた際、質問欄に既往症に関する質問があったので「緑内障」と書いたつもりが「縁内症」と書いていた。「緑」ではなく「縁」と書いているのに気付いた私は「これじゃあ『りょくないしょう』ではなくて『えんないしょう』(「縁が無い症」)じゃないか」と我が筝ながら苦笑してしまった。本当に自分は何かにつけ「縁が薄い」人間なのだとつくづく思ってしまった。



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